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勘違いバリュー投資家が真のトレーダーになるまでの物語

ドブ川ウシガエル戦記中編 「カゴの中の君へ」

ああ最初に謝らなかったっけ?すまねぇって。
てめーらは全員、まもなく死ぬ。

               ココペリ 

 


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 2019年5月末、手詰まりを感じていた。

アナゴカゴ を設置して3週間が経っていたが、全く成果が上がらなかった。この間に捕らえたのは、ミシシッピアカミミガメ、アメリカザリガニ、雷魚、カダヤシ、エビ、巨大おたまじゃくしで、肝心要のウシガエルを捕まえられなかった。

加えて、殺すのを躊躇って捕らえたウシガエルに逃げられてしまったトラウマから完全に立ち直れていなかった。しかしこの出来事はアナゴカゴ でウシガエルを捕獲できることを明らかにしており、それはこの戦いにおける一縷の希望となった。

 

2019年6月1日 再びの邂逅

その時は唐突に訪れた。

ウシガエルチェックと称する毎晩19時のアナゴカゴ の確認は生活のルーティンなっていた。昼間に捉えた獲物を整理して、ウシガエルが活発化する夜間にアナゴカゴ を万全の状態にしておくことが目的だ。

その日のウシガエルチェックは、遅い夕食を食べた後の作業となった。

6月ともなると気温が上がり始め、特に川の周りはハエや蚊などの虫がわきはじめる。まとわりついてくる虫を手で払いながら仕掛けポイントへと向かった。

夕方だが、ウシガエルは今日も元気に騒音をがなりたてていた。

アナゴカゴの紐を手に取り、ゆっくりと引き上げると、手元に重みを感じた。

中の獲物が暴れている。

高まる期待。

これはカメではない。

雷魚のような確実な手ごたえだ。

加えて、獲物の動きは雷魚のそれとは明らかに異なった。上下左右とアナゴカゴ の中で飛び跳ねていた。

否応無く高まる期待。

アナゴカゴ を上げると、巨大なウシガエルが網の中で暴れまわっていた。

※刺激的な画像はありませんが、ウシガエルの画像がありますので苦手な方はご注意ください

 

6月1日解放

死はいうまでもなく、肉体よりの解放にほかならず。
                  ソクラテス 

 アナゴカゴ を川岸に引き上げ、この日のために準備したウシガエルグッズを家に取りに戻る。

 

ウシガエル捕獲の報を聞き、虫や爬虫類が苦手で全くさわれない妻も川へと向かった。

 

川岸に戻るとウシガエルは網の中でじっとしていた。ジタバタしたところで状況は変わらないと察したのだろう。その大きな瞳には虚無がじっと佇んでいた。

 

深呼吸をしながらビニール手袋をゆっくりと装着し、自分にそっと問いかける。

「今からこいつを殺せるのか?」

然り、然り、然り、然り、然り

ウシガエルの触感もわからない。

ここまで近づいたこともない。

実物をじっくりと見ることすらこれが初めてだ。

はたから見ても不自然な間だったのだろう。

「…やらないの?」と妻が尋ねた。

もちろん、やる。私はやらなくてはいけない。殺さないと私の安眠は手に入らない。頭ではわかっている。

しかし、感情が強烈に拒否する。ハエや蚊を叩き潰すのとはわけが違う。ウシガエルの大きな眼球とパチパチと動くまぶた。「生き物」の実感が重くのしかかった。

殺さなくてはならない理性と殺したくない感情がせめぎ合う。大きな生き物の命を奪うのはどうやったところで難しいのだ。

 

覚悟を決めた。

 

アナゴカゴ を少しだけ開け、ゆっくりと手を入れる。驚いたウシガエルは飛び跳ねて暴れまわったが、体をしっかりと掴まれた途端に無抵抗になった。


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長くて太い脚をしっかりとつかんだ。これで、万が一ウシガエルが暴れようとも簡単には逃げられない。この脚は重くて大きい体には似合わない跳躍力を生むが、彼らの運動能力はほぼこの脚に依存しているため、ここをがっちり掴めば動けないのだ。

両足を握りしめつつ地面にウシガエルを固定し、ウシガエルグッズからアイスピックを取り出した。


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生き物であれば、頭を潰せば死ぬ。

「私は今からこいつの命を奪うのだ」心の中で3度詠唱し、目と目の間にアイスピックを押し込む。

ウシガエルの頭部は思っていたよりも柔らかく、刃はすんなりと刺さった。

「グフッ…グゥ…」

ウシガエルが呻き、血を吐いた。血管を突き刺したらしい。

脳と思われるところにアイスピックを何度か突き刺した。血で濡れたアイスピックがヘッドライトの明かりで怪しく光った。

 

しばらくして握りしめていたウシガエルの脚から力が抜けていくのを感じた。

ウシガエルをひっくり返すと力なく弛緩した手足がだらしなく伸びる。

「終わったよ」と妻に声をかけた。妻はいつの間にかずっと離れたところで様子を伺っていた。

気づかぬうちに、私の脚がガクガクと震えていた。すっと深呼吸をして死骸の処理を始めた。

 


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「ブゴワッ…グェッ…!」

死んだと思っていたウシガエルが飛び跳ねた。

思わず叫び声をあげて後ずさる私と妻。

ウシガエルは血を流しつつも、私の一瞬の隙をついて逃げるために必死に跳ねた。

 

***

 

2、3度跳ねたあと、ウシガエルは再びアイスピックを頭に突き刺されて地面に突っ伏した。

大怪我をしてふらふらと逃げ回るウシガエルを追いかけてアイスピックを突き立てるのは簡単な作業だった。

 

***

 

完全には死にきっていなかったのだ。 

きちんと急所をついて絶命させてやれなかった私のミスだ。

余計な苦しみを与えてしまって申し訳ない。

苦しまずに殺してあげることが最低限の私の義務だったはずなのに。

 

私は再びウシガエルの両足をしっかりと握り、その頭部を思い切りコンクリートに叩きつけた。

ゴムが弾むような鈍い音と、ウシガエルのうめき声が何度か周囲に響いた。

改めてしっかりと気絶させ、念のため背中から頭にかけて再びアイスピックを突き立てた。

ウシガエルは気絶したまま無抵抗のまま絶命した。

 

***

 

遺体は彼が生まれ育った川に水葬した。

遺体をそっと川に投げ込み、レクイエムをつぶやく。

 

私のお部屋の前で鳴かないでください

そこで私は寝てます

眠れなんかしません

千の肉に 千の肉になって

この汚いドブ川を

駆け回ってください

 

***

 

その後、6月の間にアナゴカゴ で4匹のウシガエルを捕まえて、片付けた。

1匹目に大きな苦しみを与えてしまったことを反省し、はじめにアスファルトに頭を打ち付けて気絶させてから殺すように手順を変更した。また、ウシガエルの体について改めてよく調べ、首の付け根にある脊髄をアイスピックで破壊することで一撃で殺すことができるようになった。

 

しかしながら、ウシガエルによる睡眠障害から解放される気配は一向になかった。

家の前を縄張りにするウシガエルの数が多く、駆除しても他のエリアからの流入が絶えないのだ。

アナゴカゴ が楽で優秀な戦法であることは間違いないが、「待ちの攻撃」なので、Kill Scoreを伸ばすことができないことにイラついていた。

 

「攻めの姿勢」をより強めて駆除のペースをあげるため、アナゴカゴ に加えて「釣り」でのウシガエル駆除を考え始めるのだった。

 

To be continued